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舟に印を

2017/05/07 21:53 に Sae Goto が投稿
 「この業界は昔からこうなんです。」「ずっとこのやり方で来ていますから。」こんなセリフは、このお仕事をさせていただいておりますと、毎週一度は聞いているといっても過言でない、経営者さんのよくあるコメントです。伝統産業などでは「一子相伝」「守り続けた匠の技」など、昔から変わらぬ伝統技法を今も生かし続けていることが注目されます。では、初めに紹介したよく聞くコメントと伝統を守り続けること、何か違いますよね?一体どこが違うのでしょうか?

 事業を運営する、少なくとも会社を経営するということは、オフィシャルに数人(以上)の組織が、一つの目標に向かって営利活動を行うこと、ですよね。その組織運営にかかわる業務というのは、本業にかかわるものもあれば、直接には関係ないけれど、それをやらないと会社として運営できなくなるものもあります。前者は、例えば製造業なら商品を作ること、サービス業ならお客様にサービスを提供すること。後者であれば、製造したり仕入れたり、あるいは提供するために準備したサービスが売れるように広告宣伝・営業活動を行ったり、売れたものを管理して経理や財務の管理をしたりといったような業務のことを意味します。このように、会社にはいろんな要素の業務が関与しています。

 大事なのは、時代や環境の変化によって、現在行っている業務の「何が」合わなくなっているのか(あるいは合わなくなりそうなのか)を、常にアンテナ張って注視し、より良い方向に改善していくこと。それは、時には商品そのものの変更や改造かもしれないですし、対面からインターネット販売などの「方法」、あるいは包装などパッケージの変更かもしれません。またまた或いは、もともと男性向けに主に売れていたのを女性にも、と対象の変更なのかもしれません。

 「刻舟求剣(クー・ジョウ・チィウ・ジィエン)」、昔の中国の故事ですが、舟上から川に剣を落してしまった人が、思わず舟に剣を落した場所の印を描きました。向こう岸に着いてから、その舟に描かれた印を見て剣を水中に探しに行きましたとさ、ということ。世の中は流れて行っているのに、自分は昔のやり方を変えようとしないという意味です。昔からのものであっても、人々から愛され、求められているものまで変える必要はないのです。「なんだかうまくいかない、売れない、しっくりこない、違ってきているのかもしれない」そんな嗅覚を磨くこと、そして実行に移していくことこそ、大切な仕事術なのかもしれませんね。

刻舟求剑 [ke4 zhou1 qiu2 jian4]


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