どんだけの違い?

Post date: Jun 22, 2015 1:06:58 AM

日本語で「五十歩百歩」は、それほど差が無い事のたとえとして、よく使われますが、原文の中国語では、どうも奇数の漢字ではリズム・語感的にしっくりこないのでしょう。一文字「笑(シャオ)」が入り、「五十歩百歩(ウー・シー・ブー・シャオ・バイ・ブー)」となります。その昔、中学校国語の漢詩の授業で、「戦国時代の中国で、50歩逃げた兵隊が、100歩逃げた兵隊のことを、弱虫といって嘲笑った。」という説明を聞いたこと、思い出しませんか?50歩でも100歩でも、逃げたことには変わりないのに、その50歩の差たるや、いかほどのものなのか、いや、取るに足りないほどの差である、ということですね。

先週も日本企業の海外事業展開を担われている、現地法人の代表者さんとお会いすることができ、新規ビジネスの話や現在の中国のお話など、盛りだくさんのお話で充実した時間を過ごしました。その際、その方が仰った言葉で、特に心に残ったのは「中国でダメなら他の国に行っても無理である。海外事業で簡単なことは何もない。障壁がちょっと高いか、ちょっと低いかの差である。」ということです。どんな人間でも、知らず知らずのうちに自分の悪いことは過小評価し、良いことは過大評価しがちです。また、事業が上手くすすまないのも、原因は自分にあるのではなくて「GDP成長率が落ちてきているから、円安だから、日中関係が悪いから…」と、何か不可抗力の所為にして、できないことを正当化しようとしてしまう、そんなこと、よくありますよね。

上手くいかない原因を分析しても仕方ない、ということではありません。もともと海外事業展開(貿易や海外拠点の設置のみならず、インバウンド等も含む、広義の国際化)は文化や習慣、言葉の違う人々との間で、取引を行うこと。日本で起業しても黒字化や、ビジネスが軌道に乗るまで何年もかかるのに、日本でできたことがそのまま海外でも通用するか、日本人が喜ぶものが外国の人も喜ぶのか、といえば、決してそうではないのです。実際にやってみないと分からない課題や問題も立ちはだかるでしょうし、それをひとつひとつ解決して、我慢して、地道に努力して初めて一歩すすめる、そのぐらい覚悟も必要ですし、それゆえに成功すれば喜びも、得られる利潤も大きいのだと思います。

結局、「事業は人なり」と松下幸之助さんの言葉ではないですが、ビジネスが人と人との信頼関係の上に成り立つものならば、その関係を構築するのに時間がかかる、ということなんでしょう。その次に法律であったり、制度上の問題であったり、あるいは地理的な条件だったり…と、国や取り扱う商品・サービスによって個別の問題や課題があるのです。それこそが「五十歩(笑)百歩」、人との信頼関係ほど大きいものでは無い、ということではないでしょうか。

五十步笑百步 [wu3 shi2 bu4 xiao4 bai bu4]