そんな揚げパンに

Post date: Nov 7, 2016 12:08:37 PM

20代のころは、30代になるということが信じられなくて、いつまでも若い自分が続くんだと思っていました。また、20代の私は一人でロシアに旅立って2年滞在したり(日本語教師をしていました)、東京に出てきて働いたりと、なんでも自分でできる気持ちになっていて、今から思うとホント、恥ずかしいくらいです。

30代になって、結婚・出産をし、当時会社員だった私は産後職場復帰するのが怖いと思いました。それは、20代独身の時に、育児のために定時よりも早く帰る女性社員や、どんなに忙しくても契約社員だからと時間通りに退社する人たちに対し「こんなに忙しい時に、信じられない!」という表情を露骨にしていた(と思われる)ので、私も今度はそんな視線を向けられる側になる!!と考えたからです。ところが、実際は全く違いました。20代の若手社員、当時の私からすると後輩や部下に当たるような人たちは、私の子供のことを心配してくれたり、私が一人早く帰っても笑顔で挨拶してくれたりしたので、こんな親切にされるなんて、と正直拍子抜けでした。その頃からでしょうか。自分よりも年齢が上ということは、その分自分の知らない世界を経験されてきている方なんだ、という風に心から思えるようになったのは。

若さは確かに武器です。心身ともに充実してエネルギーに満ち溢れ、なんでもすっと覚えられるし、フットワークも軽々と行動できます。もちろん、お肌だってハリもあり、若いだけで美しい!って思えてしまいます。だからそれが実力と過信してしまうのも若さなんでしょうね。イレギュラーに出くわした時の解決方策、それに立ち向かう時の心構え、そして他人へのいたわりの気持ち。こういったことは、経験の乏しさから勢いや若さだけでは乗り越えられず、くじけたり耐えられなくなってしまったりもします。

中国語、それも北方の言葉のようですが、「老油条(ラオ・ヨウ・ティアオ)」とは、揚げパンさん?とでも訳すのでしょうか?経験のある人のことを形容します。「老(ラオ)」の訳し方に迷いますが、年上の人に対する「~さん」のような意味もあり、「いつもの」とか「古い、大きい、経験のある、年老いた」のような、比較的日本語の「老」に当たる意味もあります。が、この場合は「油条(ヨウ・ティアオ)」という中国の伝統的朝ごはん、お粥と共に食べる、日本でいう、お揚げの小麦粉版みたいな揚げパンに冠しているのですから、いつものお粥に味を深める役目をする、いつもの、絶大なる信用力を誇るこの食べ物!みたいなイメージなんでしょうか。いつまでも新鮮で素直な気持ちを持ちながら、信用され、頼りになる揚げパンになれますように。

老油条 [lao3 you2 tiao2 ]